錦鯉飼育法事件
東京高裁 昭和63年(行ケ)133号 平成2年2月13日判決
事件の概要
発明の要旨 「スピルリナプラテンシス及び/又はスピルリナマキシマを給飼することによって、斑文あるいは色調の色揚げ効果(顕色効果)を高めることを特徴とする、赤色系斑文あるいは色調を有する錦鯉および金魚の飼育方法」
この発明が、単なる「発見」であって「発明」ではないとして無効審判が請求された。
無効不成立審決に対し、審決取消請求がされた。
裁判所の判断
「確かに、スピルリナプラテンシスあるいはスピルリナマキシマがある種の生体に対して色揚げ効果を有すること自体は自然法則にほかならないが、スピルリナプラテンシスあるいはスピルリナマキシマがそのような効果を有することは当業者にとっても自明の事項とはいえない。そして、本件発明は、スピルリナプラテンシス『及び/又は』スピルリナマキシマを『赤色系錦鯉等』に対して『給飼』すること、換言すれば、スピルリナプラテンシスあるいはスピルリナマキシマを、組み合わせて、あるいはそれぞれ単独で給飼(発明の詳細な説明に即していえば、前記のとおり、『飼料に分散添加』する態様で給飼)する方法を採用し、しかも、飼育対象をカロチノイド系色素を有する錦鯉及び金魚のみに限定することを要旨とするものである。したがって、本件発明の方法には、単なる自然法則の『発見』を越えて、自然法則を利用した技術的思想の創作といい得る要素が含まれており、しかも右技術的思想が産業上利用できるものであることは明らかであるから、本件発明の特許が単なる『発見』に対してなされたものであるということはできない。」
「スピルリナプラテンシスあるいはスピルリナマキシマがある種の生体に対して色揚げ効果を有すること」(自然法則)を発見
それに、
錦鯉及び金魚に限定して、
スピルリナプラテンシス及び/又はスピルリナマキシマを給飼する
という「自然法則を利用した技術的思想の創作といい得る要素」
を加えているので
発明といえる。
錦鯉飼育法事件