氷山印事件
商標の類否判断
最高裁 昭和39(行ツ)110 昭和43年02月27日第二小法廷判決
商標登録出願拒絶査定不服抗告審判審決取消請求
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「本件についてみるに、出願商標は氷山の図形のほか「硝子繊維」、「氷山印」、
「日東紡績」の文字を含むものであるのに対し、引用登録商標は単に「しようざん」
の文字のみから成る商標であるから、両者が外観を異にすることは明白であり、ま
た後者から氷山を意味するような観念を生ずる余地のないことも疑なく、これらの
点における非類似は、原審において上告人も争わないところである。そこで原判決
は、上記のような商標の構成から生ずる称呼が、前者は「ひようざんじるし」ない
し「ひようざん」、後者は「しようざんじるし」ないし「しようざん」であつて、
両者の称呼がよし比較的近似するものであるとしても、その外観および観念の差異
を考慮すべく、単に両者の抽出された語音を対比して称呼の類否を決定して足れり
とすべきでない旨を説示したものと認められる。そして、原判決は、両商標の称呼
は近似するとはいえ、なお称呼上の差異は容易に認識しえられるのであるから、「
ひ」と「し」の発音が明確に区別されにくい傾向のある一部地域があることその他
諸般の事情を考慮しても、硝子繊維糸の前叙のような特殊な取引の実情のもとにお
いては、外観および観念が著しく相違するうえ称呼においても右の程度に区別でき
る両商標をとりちがえて商品の出所の誤認混同を生ずるおそれは考えられず、両者
は非類似と解したものと理解することができる。原判決が右両者は称呼において類
似するものでない旨を判示した点は、論旨の非難するところであるが、硝子繊維糸
の取引の実情に徴し、称呼の対比考察を比較的緩かに解して妨げないこと前叙のと
おりであつて、この見地から右の程度の称呼の相違をもつてなお非類似と解したも
のと認められる右判示を、あながち失当というべきではない。」