工業上利用できる意匠とは
意匠の工業性(工業上利用することができる意匠)
1.工業上利用することができる意匠とは工業的生産過程において量産可能な意匠をいう(以下、単に意匠の工業性という)。
2.法が、産業上の発達を目的とし、その手段として意匠を保護するのは、意匠が物品の美的外観であって(2条1項)、人の感情に訴えて物品の需要を喚起しもっと物品生産活動を活発にするからである。
従って、たとえ美感を起こさせる意匠であっても工業的生産過程で量産可能なものでなければ生産活動の活発化に資するものでなく保護に値しない。
そこで、法は登録要件として意匠の工業性を要求したのである (3条1項柱書)。
ところで、意匠の歴史的発展過程からみると意匠の工業性は意匠の本質であるといえる。すなわち、意匠という概念は産業革命後機械による多量生産が可能となった後、工業製品の発展とともに生まれた概念であって、工業製品を離れて存在しないからである。
従って、実質的な意匠の定義は工業上利用できる意匠ということになる。
意匠法が工業性を登録要件とするのは立法技術上の便宜である。
なお、特許法・実用新案法では意匠の工業性に対応するものはいわゆる産業上利用性であり、その範囲が産業全般にわたる。
これは、発明・考案を産業に役立たせる趣旨であって意匠法と考え方の立脚点を異にするからである。
3. 意匠だけ「工業上利用」と規定した理由。
《1》意匠の工業性は本来意匠の本質であるため、3条1項柱書は法技術上の見地から、本来意匠の本質である工業性を登録要件までレベルダウンさせたにすぎない。→産業に拡大できない。
工業上利用できる意匠であれば、農業・漁業等他の産業でも活用可能・・農業用器具機械、漁業用器具機械は取りも直さず工業上利用できる意匠で作られるので、工業上で十分。
《2》☆意匠の工業性→『工業生産過程で同一物を量産できる』という意味。
利用→資質が工業的に造れる。
☆これに対し、特許法における産業上利用性とは生産業はもとより、生産を伴わない補助産業を広義の産業界において発明を実施できることをいい、学術的、実施的のみ利用できる発明を排除する意味。
利用→実施→実施して産業に役立つ。