学習机事件
大阪地裁 昭45(ワ)507 昭和46年12月22日判決
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「 意匠の利用とは、ある意匠がその構成要素中に他の登録意匠又はこれに類似する
意匠の全部を、その特徴を破壊することなく、他の構成要素と区別しうる態様にお
いて包含し、この部分と他の構成要素との結合により全体としては他の登録意匠と
は非類似の一個の意匠をなしているが、この意匠を実施すると必然的に他の登録意
匠を実施する関係にある場合をいうものと解するのが相当である。意匠法第二六条
は登録意匠相互間の利用関係について規定するが、意匠の利用関係のみについてい
えば、他の登録意匠を利用する意匠はそれ自体必ずしも意匠登録を受けている意匠
である必要はなく、意匠の利用関係は登録意匠と未登録意匠との間にも成立するも
のであり、他人の登録意匠又はこれに類似する意匠を利用した未登録意匠の実施
が、他人の当該意匠権の侵害を構成することは勿論である。ところが、意匠権者は
登録意匠及びこれに類似する意匠の実施を有する権利を専有する(意匠法第二三
条)ところから、他人の登録意匠又はこれに類似する意匠を利用した意匠が偶々自
己の登録意匠又はこれに類似する意匠である場合には、利用された側の意匠権者の
独占的排他権と利用する側の意匠権者の実施権とが衝突するため、両者の関係を調
整する必要がある。意匠法第二六条はかかる場合双方の登録意匠の出願の先後関係
により先願の権利を優先せしめ、後願の登録意匠又はこれに類似する意匠が先願の
登録意匠又はこれに類似する意匠を利用するものであるときは、後願にかかる意匠
権の実施権をもつて先願にかかる意匠権の排他権に対抗しえないこととしたのであ
る。
意匠の利用関係が成立する態様は、大別すると次の二つとなる。その一は意匠に
係る物品が異なる場合であり、A物品につき他人の登録意匠がある場合に、これと
同一又は類似の意匠を現わしたA物品を部品とするB物品の意匠を実施するときで
ある。その二は意匠に係る物品が同一である場合であり、他人の登録意匠に更に形
状、模様、色彩等を結合して全体としては別個の意匠としたときである。
右のいずれの場合であつても、意匠中に他人の登録意匠の全部が、その特徴が破壊
されることなく、他の部分と区別しうる態様において存在することを要し、もしこ
れが混然一体となつて彼此区別しえないときは、利用関係の成立は否定されること
を免れない。」