違反要件総論④反競争性3
2017-10-17
市場と反競争性の総合理解(続き〕
「供給の代替性」について
結論:供給の代替性を強調するのは、「簡易な市場画定による中間判断、詳細を織り込んだ最終判断」という最近の傾向に反するものとなっている。現に公取委実務において供給の代替性はそのような扱いを受けるようになっている。
「供給の代替性」とは
現時点では他の商品役務を供給する者が検討対象商品役務を供給するようになることを、市場画定の段階で考慮しようとする考え方
EUでは市場画定の段階で考慮
日本はEUに追随
米国では反競争性の段階で考慮
米国ガイドライン7頁下から2段落目
日本のガイドラインに書き込まれ、「需要の代替性・供給の代替性」と丸暗記的にセットで登場
米国流でなくEU流をとることの機能的意味
①市場シェアを小さく算出し早期にクリアランス
②検討を簡素化する(特に、検討対象市場の数を減らす)
最近の動き
公取委が、以下のような場合に、市場画定段階で供給の代替性を考慮することを拒否
供給者の構成が一致しない
供給者の市場シェアが相当程度異なる
事例
平成26年度企業結合事例3〔王子ホールディングス・中越パルプ工業〕
平成26年度企業結合事例7〔ジンマー・バイオメット〕
分析
①はあり得ないことになる
これを拒否するほうが、「簡易な市場画定による中間判断、詳細を織り込んだ最終判断」という最近の実務傾向に合致
結局、②だけのもの
新幹線飛行機問題
「大きな市場の中にサブマーケットが成立する条件」という議論に対する回答
需要者の画定が中心課題
世界的な議論において十分な体系化がされていない
米国での議論
次の条件を満たすときにサブマーケットが成立する
供給者が特定の需要者を区別できる(価格差別可能性)
需要者がarbitrageできない
感想
結論は同じかもしれないが、
市場(「サブマーケット」)が成立しないというのでなく、
その市場において反競争性が成立しない(成立しないことが多い)というほうが据わりがよいのではないか
H22NTT東日本最高裁判決調査官解説
狭い需要者が新たに出現し拡大していくものであれば、価格差別可能性がないなどの事情があっても違反となり得る
拙感想を裏付けるもの
読解資料
米国水平型企業結合ガイドライン
下記のうち、pp 6-7(新幹線飛行機問題で紹介した米国の議論)