違反要件総論①市場
2017-10-03
企業結合審査手続を知ることは市場・反競争性を理解するために有益
弊害要件論は企業結合事例がリードしてきた
違反要件の基本構造
行為要件+因果関係+弊害要件
弊害要件
共通→総論
行為要件
各論
例、競争者との合意(水平的制限)、垂直的制限、取引拒絶、企業結合
因果関係
あまり研究されていない
弊害要件
(行為・によって)市場における反競争性があり正当化理由がない
市場は、反競争性(と正当化理由)を論ずる舞台
反競争性の基本的考え方を見てから、市場→反競争性詳論、と進む
反競争性の基本
競争変数が左右される状態
「競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによつて、市場を支配することができる状態をもたらすことをいう」(S28東宝新東宝東京高裁判決)
「市場支配的状態」などとも略される
競争変数(competition parameters)
このように抽象概念で捉えておいたほうが様々なものを取り込みやすい
最近の好例:無料サービスにおける「利用規約の内容」
市場
反競争性(と正当化理由)を論ずる舞台
市場概念
定義はほとんど見かけない
日本独禁法2条4項は、よくできた定義
2条4項の「競争」が行われる場が「市場」
供給者・需要者・商品役務
需要者と消費者は異なる
英語資料で、consumerが需要者の意味であることは多い
市場画定(market definition)
前提
市場画定とは
個別事案において問題となる市場の範囲を見定める作業
市場という概念の定義ではない
検討対象市場(relevant market)
「関連市場」?
検討対象市場は無数にあるのが普通
議論になりそうなものだけが選ばれて言及される
何のために市場画定をするか
反競争性の議論の舞台設定(関係者の視覚化)
要検討案件の絞り込み
基本的考え方
需要者からみて選択肢となる供給者の範囲(需要の代替性)
需要者の画定
供給者の画定
多く見られる実際の議論
需要者の範囲を無意識に前提し供給者の範囲のみを論ずる
需要者・供給者の2層があるという思考回路がない
うまくいかないときだけ、理論的言語化のないまま需要者の画定(に相当する作業)を行う
供給者の画定
判断基準
需要の代替性(既出)
供給の代替性
供給者の側の努力で(近い将来)需要者の選択肢に入る可能性
反競争性2で言及するので暫く忘れる
代表的な2つの切り口
商品役務の範囲
地理的範囲
公取委事例でも「地理的範囲は日本全国」などと言われるが、市場に2層あると理解されていること自体が稀であるので、供給者の範囲が日本全国なのか需要者の範囲が日本全国なのか明言されないことが大多数
認定の方法
1つの計量的方法として喧伝されるのがSSNIPテスト
コスト
信頼性
最近流行の無料サービス論には使えずSSNDQ...
商品役務の客観的用途や需要者ヒアリングなどを組み合わせて定性的に認定しているのが多くの事例の実際の姿
需要者の画定
選択肢となる供給者の範囲が同じであるような需要者群を発見し、その範囲を画定
多くの事例の決め手
最判平成22年12月17日・平成21年(行ヒ)第348号〔NTT東日本〕
東京高判昭和26年9月19日・昭和25年(行ナ)第21号〔東宝・スバル〕
(教室では時間の関係で省略)
平成24年度企業結合事例9〔ヤマダ電機・ベスト電器〕
保護に値する需要者
東京高判平成16年10月19日・平成16年(ネ)第3324号〔ヤマダ電機対コジマ〕
読解資料
Amazon Commitment Decision
下記資料のうち、教室では次のところのみ
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