搾取行為②
2017-11-24
優越的地位濫用ガイドライン(頁番号入り)
優越的地位
「甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ないような場合である」(優越的地位濫用ガイドライン4頁第2の1)
判断のための考慮要素(優越的地位濫用ガイドライン4頁第2の2)
乙の甲に対する取引依存度
甲の市場における地位
乙にとっての取引先変更の可能性
その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実
公取委が最近提唱する推認ルール(H27トイザらス審決)
濫用行為を受けるということは優越的地位があったと推認される
濫用行為の認定を先に行う
濫用
主に2つの切り口(両方相俟って、もあり得る)
あらかじめ計算できない不利益
過大な不利益
例えば、優越的地位濫用ガイドラインの従業員派遣をめぐる記述(12頁ア)
トイザらス審決
納入業者から申し出て、直接の利益を超えない範囲で減額
優越的地位濫用ガイドライン17頁④の類推適用
減額を行える条件について、あらかじめ包括的に納入業者と大規模小売業者が協議
優越的地位濫用ガイドライン17頁②の類推適用
課徴金導入による違反要件論への影響
導入前
大雑把に、乙ら全体に対する「優越的地位」「濫用行為」を認定
導入後
個々の乙(乙1、乙2、……、乙127)のそれぞれについて、「優越的地位」「濫用行為」を認定
127はエディオン事件での数字
違反行為の個数については後述
理論的位置付け・規制の要否の政策論
米国・EUは、主に過大価格(excessive pricing)を念頭に置いて議論
米国の主流(完全否定論)
競争法(antitrust)専門家の間での、「主流」
論拠
独占者の稼ぎを認めることで競争インセンティブを確保
違反の成否の判断が難しい
競争変数(価格)のシグナルによる市場原理の機能を損なう
次のものと通底
「排除者と被排除者との間に競争関係がなければ他者排除行為は違反とならない」
「不要品強要型抱き合わせは競争法の問題ではない」
欧州委員会の立場
読解資料
米国は本当に完全否定か
非専門家
専門家の間でも、
Inequality をめぐる議論
"Better Deal"
Harry Firstの最近の論文
「FRAND/SEP」と「医薬品」について、米国競争法(antitrust)でも過大価格に対する問題意識が高まっていることを指摘
日本
規制すべきことを前提として、位置付け論
間接的競争阻害規制説(公取委)
優越的地位濫用ガイドライン2頁末尾
競争停止でも他者排除でもないので、持って回った説明をしなければ「競争」に関係しない規制となってしまう、
搾取規制説
目的合理的な市場画定
支配的地位にある者が搾取をするのは完全競争の対極の究極形態であり「競争」に関係がある
平成21年改正後は、形式的にも、「競争」という要件を被っていない
単なる位置付け論であったが、平成21年改正による課徴金導入後、いずれを採るかが「違反行為の個数」に影響すると考えられるようになったため、党派的議論の色彩を帯びてしまった
公取委
間接的競争阻害規制説を維持したほうが、違反行為は全体で1個だと言いやすくなると考え、間接的競争阻害規制説を強調
景表法(実質的に公取委の一部である消費者庁表示対策課がエンフォース)において、違反行為の個数を多数に分ける傾向にあることと対照的
先端問題
「人材」に対する搾取・優越的地位濫用
消費者に対する搾取・優越的地位濫用
巨大プラットフォーム等による利用規約等
相手方が事業者であることは違反要件か
読解資料
欧州委員会が2011年にOECDに提出した貢献文書のうち一部(pp. 309-310)