心理的安全性
これをベースに学ぶ
https://anchor.fm/em-fm/episodes/Re14-e1p45gj/a-a8m0pa2
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もともとはハーバード大学の組織構造学の研究をしているエイミーエドモンドソン氏が提唱
"Psychological Safety" の訳語が "心理的安全性"
Googleが2012~2016くらいに行った『プロジェクト アリストテレス』という労働改革のプロジェクトのレポートで心理的安全性というものが出てきて広まった
『チームの生産性を高める重要な役割を担っている』というような内容
「Googleが言うんだからそうなんだろうな」という情報の信頼性と安心感が付帯した
心理的安全性の定義とは
チームにおいてメンバーが発言することを"恥じたり、拒絶したり、罰が与えるようなことをしない"という確信を持っている状態
チームは対人リスクを取るのに安全な場所である という信念が共有されている状態
"仲がいい" とは違う
似て非なるもの。
"意見をぶつけ合っても不利な状況にならない" という感覚が共有されている状態とも言える
心理的安全性は誰が作るか
チーム全員で作るもの
チーム内の誰かが作るものではなく、誰かが作ってくれるものでもない
心理的安全性はチームのみんなで総合的に作っていくもの
このことが"チーム全体で共有されている概念"であることがなによりの前提になる
心理的安全性を構成する要素
4つの大丈夫と4つの不安の計8つの要素がある
4つの大丈夫
ここにいても大丈夫 と思えること
意見を言っても大丈夫 と思えること
間違いを認めても大丈夫 と思えること
助けを求めても大丈夫 と思えること
4つの不安
ネガティブな人だ と思われる不安
無知だ と思われる不安
無能だ と思われる不安
邪魔をしている と思われる不安
エイミーエドモンドソンは論文を書くにあたりどういった試験と評価をしたのか
7つの質問項目を7段階で答える方式
1. チームの中でミスするとたいてい批難されるか
2. チームのメンバーは困難な課題を提起しあえると思えるか
3. チームのメンバーは異質なものを排除することがあると思うか
4. チームに対してリスクを取ることを安全であると思えるか
5. チームの他のメンバーに助けを求めることが難しいと思うか
6. チームのメンバーは誰も自分の仕事を意図的に貶めるような行動はしないと思えるか
7. チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能を尊重され活かされていると感じるか
エイミーエドモンドソンのこの試験内容を見ると、"心理的安全性"というフレーズから感じられる"仲良し感"とはちょっと違うことがわかる
お互いを自立した大人として認知し尊重しており、意見を言うに際して貶められないという方向性
心理的安全性がある=「安心な環境」「プレッシャーがない環境」「ストレスがない環境」とかではない
この方向で考えてしまうと「生ぬるい職場」になってしまったり、「お互い気を使い合っているから楽しく過ごせる」みたいになりがち
これは本来の 心理的安全性 = "Psychological Safety" ではない
1natsu.icon 日本文化の「尊重」や「気を使う」は特殊で、うまくやらないと欧米文化の"Psychological Safety"と噛み合わない可能性がありそう
「事を荒立てないために」「リスクを取らないために」尊重したり気を使ったりする文化が日本にはある
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心理的安全の四象限
https://経営デザイン.jp/wp-content/uploads/2019/12/%E5%BF%83%E7%90%86%E7%9A%84%E5%AE%89%E5%85%A8%C3%97%E8%B2%AC%E4%BB%BB.jpg
e.g. https://xn--eck9awc8jr32piwxc.jp/2019/12/29/post-292/
無関心ゾーン
最小限の努力で仕事しようとする。チームの成果が期待できない。
快適ゾーン
今以上のチャレンジや、より学習しようという意識が起こりづらい。
不安ゾーン
おっかなびっくり不安を抱えながら仕事をすることになり保守的な傾向に陥る。
学習ゾーン
チームが機能するゾーン。互いに学び協働しながら仕事を運ぶことができる。
チームが正しく機能するには学習ゾーン(Learning Zone)に居続けなければならない
マネージャーは四象限の右上 学習ゾーン(Learning Zone)に導いていく必要がある
心理的安全が高いだけではなく、同時に"高い責任"が必要になってくる.
この二つが揃わないと結局のところチームが機能するというところに至れない
心理的安全性だけでなく「高い責任意識をもとに問題に立ち向かっていく意識」が個々人に必要になる
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心理的安全性(Psychological Safety)がない現場はどうやったらできあがるか
ひとことでいうと心理的安全性の有無は 水を差せるかどうか にかかってくる。なので心理的安全性のない現場は水が差せない現場とも言える。
権威勾配(Authority Gradient)の角度が高すぎると水が差せない
権威勾配とは
雑に言うと上司のもつ権威と部下との格差
権威勾配が高い状態とは
「偉い人(Authorityが高い人)が言ったことだから意見がしづらい」
権威勾配が招くネガティブな例
航空業界:計器に不穏な現象を副操縦士が気づいたが、主操縦士が気づいてないから”いいづらいな” となり言えなかった
結果、事故につながった例
医療業界:ドクターのミスらしきオペレーションにナースが気づいたものの意図があってかと思い指摘できなかった
結果、医療ミスにつながった例
権威勾配自体が問題ではなく、権威勾配の高さから 『意見がしづらい・声出しができない』状態になることが問題
権威勾配による水の差せなさは我々にもよくある問題で他人事ではない
「みんなが言ってるからきっとそれが正しいのだろう」と思い 『そうですね』と同調することはよくある
「少数側らしき意見になりそうだし、いまさら意見を言うのはどうかなー」と思って何も言わないことはよくある
Group Think(集団浅慮)が心理的安全性を結果的に下げる
集団だからこそみんなで馬鹿な方向に動いてしまうことが起こる
勢いですごくリスクのある方を取ってしまうとか。
あるいはリスクを回避しようと極端に安全側に倒して考えてしまうとか。
脳の個数と判断の正常性は必ずしも比例しない(集合知と逆の効果=集団浅慮)
どのように心理的安全性の低さにつながるか
「みんなで片一方の意見に寄っていってしまい、誰もそれを止められない」とか「みんなでミスやエラーを隠蔽してしまうようなことがまかり通ってしまう」とかが起こると…
"問題に対して真っ当な議論ができない空気" や "正しさを追求できない空気" が醸成される
一言でいうと空気が悪いになる
空気が悪い職場は生産性が低い職場……というように繋がっていってしまう
空気と水
日本の戦時下における例で山本七平さんの空気の研究という本がある
旧日本軍が敗北していく過程での意思決定の話
空気が色んな物を決めていたという表現をされていて『逆らえる空気じゃなかった』『戦争を回避できる空気じゃなかった』『国の権力者よりも空気に支配されているような雰囲気だった』というような内容の本
空気に対してカウンターとして水を差すというワードが表現されている
水を差す=沸騰しているお湯に水を差すと鎮静ができるという意味合い
「冷静な意見をスパッと入れてそれを広げていけるかが空気に対して唯一対抗できるもの」と表現されている
心理的安全性があるという状態はこの "水が指しやすい状態" であるとも言える
ある議論が沸騰していったときに、そこへ水を差せるかどうか
水を差すことによって正しい方向に導ける可能性が高まるということ
本質的ではない状況に話が進んでいる時にサッと水を差せるかどうか
水を差せるなら心理的安全性が高い
プロジェクトのリスクと心理的安全性
そもそもソフトウェア開発においてなぜ心理的安全性が有効か?
リスキーシフトを避けることに有効だから
心理的安全性があればリスキーシフトに水を差せる
プロジェクト炎上のリスクを下げるには
"リスク事象ドライバーにいかに対処できるか" になってくる
リスキーシフトと同じで、リスク事象ドライバーに対して心理的安全性でブレーキをかけれるか(水を差せるか)どうかが重要になる
心理的安全性があるチームであればリスク事象ドライバーからくるバッドスメルに対して水を差せる
ズルズル放置したり「まあ後で考えようよ」とリスク事象ドライバーを先送りにしてしまわないチームであるはず
結果、リリース間近になって色んな物事が燃えたりしない
ものづくりが作りが上手いチームである
「プロジェクトがうまくいく要因の一つ それが心理的安全性になんだ」 につながる
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『心理的安全性の高いチームを"作りやすいかどうか"』はどこで決まるか
構成メンバーが個々に持っているソフトスキルに左右される
以下のようなタイプの人が一人でも居ると、心理的安全性の高いチームを築くことが急激に難しくなる
不安にさらされやすい人
言語化がうまくできない人
攻撃性が高い人
回避性が高い人
"有害な人"とひとことで表現されたりする
Brillant Jerksという表現が有名かもしれない
Team Geekでも有害な人として以下のようなタイプを挙げている
Toxic Peopleと表現されている
他人の時間を尊重しない人
エゴが強い人
完璧主義な人
未熟なコミュニケーションをする人
不必要に煽ったり、相手を想像しないような人
何かを要求だけする人
パラノイアな人
被害妄想や陰謀論、事実か定かでないことを軸にしてしまう人
なぜ無意識に有害な人 Toxic PeopleやBrilliant Jerksになってしまうのか
結論からいうと言語化能力・伝達能力の低さからくる(ことが多い)
言語化するときのプロトコルを持ち合わせていないと周囲に伝えられない・理解されない状態から抜け出せない
意外と周囲より能力(ハードスキル)が高かったりIQが高かったりするほど、有害な人になってしまうこともある
経験や知識の高さからアラート検知が早かったりBadなことに対する認識スピードが早い
リスキーシフトに気づいたり、リスク事象ドライバーに感づいたり、バッドスメルに敏感で "なんかうまく言いたい・解決したい" 状態になりやすい
"なんかうまく言いたい・解決したい" ときに言語化能力や経験が不足しているとうまく周囲に変換して伝えられないので当然理解されない
こういうときの問題や物事はたいてい複雑で、伝え方がより難しい
「なんでわからないんだろう」とか「なんで伝わらないんだろう」となり、どんどん負のスパイラルに陥ってしまう
うまくいかないのでどんどん被害妄想だったりパラノイア的になっていき、いつのまにか有害な人になってしまう
有害な人になると、周りのメンバーの生産性を下げたり、自分が活躍したくても信頼感を構築できておらずチャンスがやって来なかったりする
本人にとっても残念な結果にしかならない
一方で、現場が変わるとまったく有害な人ではなくなるケースもある
自分以上に優秀なメンバーで構成されているとか、スキルのベースライン水準がかなり高いチームの場合
こういう現場はリスキーシフトが発生しにくい、リスク事象ドライバーが顕在化しない
抽象度の高い物事に対する認知レベルが揃っているので有害な人になるまでに至らない
"言語化能力・伝達能力が乏しいと誰しも有害な人になりうる" とも言える
コミュニケーションの距離があると埋めなければいけないズレが多すぎて、人間なら誰しも疲れて荒んでしまう
言語化能力・伝達能力があるとズレを埋められる可能性が高い とも言える
他者へ頼る力・お願いする力も必要
なにか困っているときや助けを請いたいときは周囲にお願いをしないといけない
お願いをする=相手に自分の意見を主張するということ
『何かをして欲しいとお願いすること』というのは意外と難しい
多くのストレスがかかる行為である
ミルグラムの1970年代の実験
アメリカの電車で席を譲ってくださいというときの心理実験
現代よりも殺伐とした社会であり車内も今のようにSafetyではない時代
結果は7割快諾されたものの "頼んだ側は如実にストレスを感じた" という結果
『お願いする』ということは慣れてないと、なおのことストレスが高い
ことエンジニアにおいては社会的にお願いする経験が圧倒的に不足しているケースが多い
なぜなら人生において断られることが多い前提のノルマ型のタスクに触れる機会があまりないから
苦手なことなので率先してお願いする気持ちにもなりづらく、"できれば察して欲しい"という気持ちが強くなってしまう
それはなぜかと言うと頼む側・頼まれる側で労力の非対称性があるから
頼む側はどんなに些細なお願いでも様々な脅威に晒されてしまう
関係性が悪くなったらどうしよう
断られたらどうしよう
頼んだことをうまく行ってもらえなかったらどうしよう
本当にフェアな頼み方になっているだろうか
頼んだことによって下手(したて)に見られたらどうしよう
一方で頼まれる側にはそんなに脅威はない
頼まれたことをやってあげてもたいてい「いいことをしてあげたな」ぐらいの気持ちでしかない
『頼る力・お願いする力を身につける=慣れるには?』
自分の主張を相手に伝える・頼る・お願いするときにはアサーティブコミュニケーション(Assertive Communication)力が重要であり有効
アサーティブコミュニケーション力をどう鍛えるか
DESC法というフレームワークで話す訓練をすると鍛えられる
D Describe 事実を伝える
E Explain 気持ちを表現する
S Specify 提案・お願いをする
C Choose 選択・結果を示唆する
アサーティブコミュニケーション力をDESCフレームワークを通じて鍛えると "心理的安全性が高まる"
頼るためにはうまく言語化できないといけない
頼るときはうまく伝達できなければうまくいかない
心理的安全性を高めるためにうまい伝達をするにはうまく言語化できなければならない
”うまく伝える”ことが苦手なチームにおいては、そもそも頼る力と言語化能力・伝達能力を底上げするほかない ともいえる
心理的安全性に必要な耐える力
ネガティブケイパビリティの高さ
あるネガティブな状況をそのままにしておいて耐えられる力
性急な判断や性急な結論を求めない耐える力が求められる
エンジニアは問題解決したがりなので「問題に対して静観する」というのが苦手なタイプが多いのが事実ではある
ネガティブケイパビリティが低いとどうなるか
性急な判断や性急な結論を求めてしまう
わかりやすい結論を提示してくれるものに飛びつきやすい
問題に対して表層的な解に飛びついたり攻撃的行動や回避的行動に繋がりやすい
『この人が悪いからいまこうなっている』とか『こういう凶悪な存在があるからダメなんだ』みたいなコミュニケーションをしてしまいがち
視座が高いとかコンテキストの理解が深い人からすると「ちょっ…ちょっと待って」と言いたくなるようなコミュニケーションが展開されてしまいがち
不確実性を削る意識を持たねばならない身である一方で、不確実性に対してある程度鈍感である器用さが求められるということでもある
1natsu.icon この器用さって経験で培われる部分がある気がする
ベテランであるほど似たような不確実性の経験があって「どっしり構えられる=ある程度鈍感であってもストレスにならない」みたいなのがありそう
ネガティブケイパビリティが高いと、チームと個人のスキルの水準が乖離しているときに有害な人化しにくい
「チームと個人のスキルの水準が乖離している」というネガティブな状況に冷静になれる
お互いに歩み寄れる余地もあるし、再編成する余地も生まれる
『心理的安全性の高いチームはどういった人々で構成され支えられるか』
上述の内容であるソフトスキル三本柱を身に着けた人々で構成される
言語化能力・伝達能力
他者へ頼る力
ネガティブケイパビリティの高さ
心理的安全性の高いチームはこの三本柱で支えられている。ゆえにチームで問題に真っ向から向き合うことができて、人間の本能に打ち勝ち集団浅慮を回避することができて、結果的にプロジェクトの生産性があがる
『だから心理的安全性がプロジェクトをうまく完遂するために必要なんだ』 になる
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1natsu.icon 端的かつ暴力的な表現をすると、みんなで社会人力の高い人間にならないといけない になりそう
社会人力が高い人は仕事ができる
仕事はできる人はプロジェクトもうまく完遂できる
プロジェクトをうまく完遂できるチームは心理的安全性が高い