戦略を実行できる組織、できない組織
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「君は世間知らずの学者さんだ。私は『どうすれば』いいかと聞いたんだ。君の答えは『何を』すべきか、だろう。何をすべきかならわかっている。私が知りたいのは、それをどうやってするかだ」
第一に、有意義な結果を出したいなら、結局は行動変革型戦略を実行しなければならない。サイン型戦略の活動では、目標から遠く離れるだけである。第二に、行動変革型戦略に取り組むときは、竜巻と闘わなくてはならない。竜巻は極めて手ごわい敵である。多くの企業が敗れ去っている。 実行の4つの規律は、竜巻を制御するためのものではない。最も重要な戦略を竜巻が吹き荒れる中で実行するためのルールである。
チームがより多くのことを達成するために、リーダーはより少ないことにフォーカスするのである。何もかもを一度に大幅に改善しようとしても、どだい無理なのである。第1の規律を導入するときは、本当に重要な目標を一つ(多くて二つ)を選ぶ。これを最重要目標(Wildly Important Goal:WIG)と名づけて、何よりも重要な目標であることをチームにはっきりと示す。その目標を達成できなかったら、他のどんな目標を達成したところで、たかが知れている。ほとんど何の効果もないと言ってもいいだろう。
先行指標は、遅行指標とはまるで異なる。目標を達成するためにチームが実行しなければならない最もインパクトの強い活動の指標だからだ。先行指標は基本的に、遅行指標を成功に導く新たな活動を測定する。たとえば、ベーカリーの来店客全員に試供品を提供するというようなごく単純な活動も、ジェットエンジン設計の規格を守るといった複雑な活動も、先行指標になる。
適切な先行指標には、二つの基本的な特徴がある。目標達成を予測できること、そしてチームのメンバーが影響を及ぼせることである。
第4の規律の秘訣は、定期的なリズムを維持すること、そしてそれぞれのメンバーがみずから約束をすることである。チームのメンバーはすべきことを指示されるものと思っている。指示してほしいとさえ思っている。指示待ちが普通なのだ。しかし、すべきことを自分で決めて約束すれば、責任感は増す。
スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣 成功には原則があった!』は、世界的なベストセラーとなったビジネス書である。この本の中でスティーブンは、人間の行動と効果性を支配する重要な原則を挙げている。責任、ビジョン、誠意、理解、協力、自己再生などである。 人間の行動を支配する原則があるのと同じように、チームがどのように目標を達成するのか、すなわちチームの実行力を支配する原則もある。実行の原則は、フォーカス、レバレッジ、エンゲージメント、アカウンタビリティであると、我々は確信している。
チームに過剰な目標をもたせてしまう一つの理由は、危険の分散である。あれもこれも手を出せば、どれか一つはうまくいくだろうと期待するのだ。さらに言えば、たとえ失敗しても、チームの努力が足りなかったと批判されないようにするためだ。多いほど良くないことは知っていても、多いほうが頑張っているように見えるし、上司の受けもよいだろうと思ってしまう。目標の数が減れば、個々の結果に対する責任が重くなる。それが嫌なのだ。自分の成功を努力の質ではなく量に頼るのである。
「良いアイデアの数は実行力のキャパシティを常に超えている」
最重要目標を決めるときの問いかけは、「何が最も重要か?」ではない。最初に問うべきは、「他のすべての業務が現在の水準を維持するとして、変化することで最大のインパクトを与えられる一つの分野は何か?」である。この問いで考え方が変わり、状況を一変させる焦点を見極められる。
ルール一:一度に四つ以上の目標にフォーカスできるチームは存在しない このルールはエンジンの回転速度を調整するガバナーのように機能する。実行の4つの規律に深く入っていくと、組織全体に何十ものWIG、ことによると何百ものWIGが見つかる可能性がある。しかし、一人のリーダー、一つのチーム、あるいは個人に過剰な負担をかけてはならない。彼らは竜巻の絶え間ない要求を処理しているのである。このルールを頭に入れて、あと三つのルールを考える。ルール一を破ったら、組織の焦点を失うことになる。
ルール二:選択した局地戦は、総合的な戦いに勝利をもたらすものでなければならない 軍事衝突でも、飢餓や癌、貧困を撲滅する戦いでも、局地戦と総合的な戦いの間には明確な関係性がある。ある局地戦に臨む理由は、総合的な戦いに勝つこと以外にはない。組織の下位で取り組むWIGの役目は、組織の上位のWIGを達成する助けになること以外にはない。下位WIGが上位WIGと一致するだけでは不十分だし、助けになる程度でも足りない。組織の下位のWIGは、上位のWIGの成功を確実にしなければならないのだ。
ルール三:上位役職者は拒否権を使えるが、命令はできない 組織のトップだけで戦略を策定し、部下のリーダーやチームに手渡すような方法をとっていたら、最高度の実行力はいつまでたってもおぼつかない。戦略の実行に必要な従業員の強いコミットメントは、従業員自身が参加しなければ生まれないのだ。上位役職者が最上位のWIGを決めるのは妥当だとしても、下位WIGはそれぞれのチームに決めさせなくてはならない。チームのリーダーの知識を活かせるだけでなく、従業員が目標を自分のものとしてとらえ、積極的に関わる意識も強くなる。要するに、自分で選んだ目標が組織の最も重要な目標を後押しするなら、自然と身が入るのだ。上位役職者は、各チームが選んだ局地戦が総合的な戦いの勝利に結びつかないと判断したときにだけ、拒否権を発動すればよい。
ルール四:すべてのWIGに「いつまでにXからYにする」のフォーマットでフィニッシュラインを決める 各レベルのWIGに測定可能な結果を含め、その結果を達成する期限を定めなくてはならない。
経営学・品質管理の権威であるW・エドワーズ・デミングは、財務データ(遅行指標)を眺めて会社を経営するのは「バックミラーを見て車を運転するようなものだ」(12)とエグゼクティブたちに説いた。
パトリック・レンシオーニは、著書『なぜCEOの転進先が小さなレストランだったのか』の中で、仕事に対する意欲が失せる三つの兆候を的確に示している。 一.匿名性:自分がやっていることを組織のリーダーがわかってくれていない、気にも留めていないと感じること。 二.無関係:自分の仕事がどのように組織のためになるのか理解できない。 三.無評価:自分がしている貢献を自分で測定できない、評価できない。
WIGを見つけるときには、次の三つの質問が役立つ。 一.「このチームのパフォーマンスのどの部分を改善すれば(他の部分は維持することを前提にして)、組織全体のWIGの達成に最も貢献できるか?」(「チームにできる最も重要なことは何か?」よりも効果的な質問である) 二.「チームのどの強みにテコ入れすれば、組織全体のWIGの達成に貢献できるか?」(この質問に答えれば、チームがすでに成功していて、なおかつパフォーマンスをさらに高いレベルに引き上げられる分野が明確になる) 三.「組織全体のWIGの達成に最も貢献するために、チームのパフォーマンスが低いどの分野を改善すればよいか?」(この質問に答えれば、改善しなければ組織全体のWIGの達成に悪影響を与えるローパフォーマンスの分野が明確になる)