良い戦略、悪い戦略
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良い戦略は必ずと言っていいほど、このように単純かつ明快である。パワーポイントを使って延々と説明する必要などまったくないし、「戦略マネジメント」ツールだとか、マトリクスやチャートといったものも無用だ。必要なのは目前の状況に潜む一つか二つの決定的な要素──すなわち、こちらの打つ手の効果が一気に高まるようなポイントをみきわめ、そこに狙いを絞り、手持ちのリソースと行動を集中すること、これに尽きる。
良い戦略には、とるべき行動の指針がすでに含まれている。こまかい実行手順が示されているわけではないが、やるべきことが明確になっている。「いま何をすべきか」がはっきりと実現可能な形で示されていない戦略は、欠陥品と言わざるを得ない。
戦略のカーネルは、診断、基本方針、行動の三つの要素で構成される。状況を診断して問題点を明らかにし、それにどう対処するかを基本方針として示す。これは道しるべのようなもので、方向は示すがこまかい道順は教えない。この基本方針の下で意思統一を図り、リソースを投入し、一貫した行動をとる。
悪い戦略策定では、困難な状況の分析が意図的に避けられている。これはおそらく、都合の悪いことは知りたくないという意識が働くからだろう。また、戦略策定を目標設定ととりちがえていると、問題解決に注意が向けられない
戦略の基本は、最も弱いところにこちらの最大の強みをぶつけること、別の言い方をするなら、最も効果の上がりそうなところに最強の武器を投じることである。良い戦略は、第一に、狙いを定めて一貫性のある行動を組織し、すでにある強みを活かすだけでなく、新たな強みを生み出す。だが規模の大小を問わず、同時にいくつものことをやろうとする組織がじつに多い。しかも、掲げた目標の多くが互いに無関係であるばかりか、ときには互いに矛盾することさえある。 第二に、視点を変えて新たな強みを発見する。状況を新たな視点から見て再構成すると、強みと弱みのまったく新しいパターンが見えてくる。良い戦略の多くが、ゲームのルールを変えるような鋭い洞察から生まれている。